40代管理職、父になる。

6歳男児.2歳女児、共働きの父。趣味は自転車。

川崎病その5

病棟の廊下で高齢のご婦人とすれ違い、

何となく会釈すると、

眉間を指で突き起こされる。

 

ハッとして、それが美容師さんの指で、

カット中にカクンともたげた首を起こしてくれたモノだと気づく。

美容室でもこんな夢見るのか、と自嘲しつつ、歳も近く小さな子もいるオーナー美容師さんに現状を軽く話す。

「それで有休なんですね、でも僕みたいな個人業だとどうするだろう、とりあえず朝は店に出て、後は交代…でも結構苦しいですね、何か考えないと。」とちょっと深刻にしてしまった。

 

冬を迎えるには切りすぎた髪に違和感と肌寒さを覚えながら、

息子を連れて病院へ。

やっと娘に会えるという事で息子は興奮気味。

デイルームで久々に再会した二人は、

各々で遊び方を主張してすれ違う。

そこに、先日の御老体。

「おお、なんや、お兄ちゃんもおるのか。よしよし、タッチは?」

何故か娘はダッシュしてタッチ笑。

はしゃぐ二人に僕は、

君達!声がデカいよ、

二人とも、ネズミさんの声で!というとチウチウ遊び出す。

お爺さん「いやよく躾けられとるな、、お兄ちゃん何年生や?え、まだ保育園か!えらいシッカリしとるなー」というので謙遜はするけど、

 

確かに、

息子の言葉遣いは素晴らしい。

言っておくが僕は何もしてない。

 

保育園だ。

スイミングスクールでも実家の友人の子供でも6歳児ともなれば一人称は「俺」や「ワイ」というのも普通だがウチのは「僕」。

お母さんに対して「ママのバカ!アホ!」人によってはママの事を「オマエ」呼ばわりだが、ウチの子は言わない(単に妻がアレって話もある)。それが普通なんだろう。そりゃ敬意なんてもっと後で持つ物だろうし。

ただ息子の保育園の子供達は全員一人称が「僕、私、自分の名前」。これ、オプションとしてはめちゃくちゃいい。居酒屋で頼んでも無いのに無償で飲み放題が付いてきたレベルだ。

まぁそんなこんなでお爺さんとの距離感も掴めてきたが、やはり妻は苦手なようだった。(ママを罵倒する子はパパが100%悪いと、この時妻は言っていた。)

 

ウチに帰ると、お義母さんが。

娘の様子を伝えると、まだ入院は続きそうだけれど元気な事には満足した模様。

 

息子が布団に吸い込まれ、

お義母さん、良かったらどうです?

と僕はお義母さんのグラスにワインを注ぐ。

先日の話や妻の小さい頃の話をして、

帰り際「あの子が退院したらお祝いやな」と仰るので、

ちゃんと良いワイン買ってますよ、その時は祝杯に付き合ってくださいよ、

と、お義母さんを見送る。

 

僕とお義母さんは、お互いの第一印象は最悪だったと記憶してる。

その後も結婚式の件でモメたり僕も本気で怒った事もあった。

 

でももう10年。

気が付けば同じ愛情を注ぐ幼く尊い命を守る同盟の志士であり、

その信頼度は高い。

 

決して得意な人ではないし、

その本意が孫にあると分かっているけれど、

軽蔑と信頼、

そして愛情で結ばれる関係。

 

僕達はいつの間にか、

家族になっていたのだと知った。