ヘメルット
自転車が趣味の僕としては、
子供のヘルメット選びにも余念がない。
bern(お洒落ヘルメット)だと狙い過ぎな感じもするし、GIRO(スポーツ自転車のブランド)あたりがお洒落、とはいえ、キッズ用なので当然可愛らしい絵柄がプリントされている。
こうして息子に買い与えたヘルメットを
娘がお古として引継ぐワケだけれど、
ヘルメットの耐久年数というのは実際二年くらいで、ここを過ぎるとヘルメットとしてちゃんと仕事してくれないという話だ。
ついでに息子のヘルメットも新調する為に、子供達とオシャレ自転車屋へ赴くが、
bernのヘルメットには興味すら示さず、
息子はそもそも、以前僕が買い与えたGIROのヘルメットもあまり好きでは無い様子だった。
余りにも無関心で、試着すら困難な我が子達…。
店内をキャラキャラ騒いで走り回る彼らに一喝入れて、どうしたモノかと、とりあえず町外れのイオンへ。
イオンには、イオンバイク、という自転車屋があり、大衆的な自転車、グッズが揃う。
こだわりの強い僕には敬遠したい自転車屋ナンバーワンなワケだけれど、
キッズヘルメットの品揃いに関しては期待出来そうなので立ち寄ってしまった。
ディズニーやドラえもんといったキャラ物から、
クダンのbernまで、案外幅広い品揃え。
主体性のある娘は速攻でプリンセスなんとかのヘルメットを手に取り、あきれながらソレにする?とたずねると「うえ!うえのアンパンマン!」と。
しかしアンパンマンのヘルメットとしては中々センスの良い可愛らしい柄だし、何より安い。
息子はもぞもぞ迷って「新幹線。」と。
サイドにブルーとゴールドのラインが入り、後頭部にE17、とプリントされている。
…ホントにこれでいいの?
と聞くとウン!と嬉しそうなので、
まぁいいか、パパが被るワケでなし…。
と購入。その場で包装を剥がしてもらい、二人とも嬉しそうに被って帰った。
まだ不慣れに自転車をこぐ息子、後頭部の「E17」がなんともシュールで、可愛らしくてフッとなるけれど、
大人の思うカッコ良さを、子供が理解する必要などないハズなのだ。
僕は自分の満足の為に彼らの選択肢を減らしていたのではないだろうか。
娘を保育園へ連れていくと、ヘルメットをかぶったまま教員室へ入っていき
「みてー、へめるっと!へめるっと、ぼうしやさんでかったの!」
と、その後もお友達に自慢して歩いていた。
このルーティンをここ2日繰り返している。
何やらたいそう気に入ってもらえた様だ。
僕が彼らくらいの頃は、どうだっただろう。
ホントの良し悪しなんか分からない。ただあの頃は、
自分が選んだ物は宝物だった。
それが公園で偶然拾ったゴミでも、
母に赤ちゃんみたいと笑われた物でも。
宝物だったのだ。
自分で、選ぶ全ては。
「へめるっと♪、へめるっとだよ!」
娘はずっと上機嫌でヘルメットを被ってくれていて、あまりに無邪気で、僕は、ヘルメットだよ、と訂正しようと抱きあげて、やめた。
子供達が宝物を見つける度にきっと、
愛おしさは強くなる。
僕は、抱き上げた手でギュと娘を抱きしめた。