川崎病その3
どうやら体調を崩してしまった。
日が暮れた頃、立っているのも辛くなってきた。
部下の「きっと疲れてるんですよ、任せて帰って下さい。」との言葉に甘え、終業と同時に帰宅。
早く病院に行かないと。
息子は息子で、ママが帰るのを楽しみにしてるし、ママはママで病室に缶詰だし、当然娘も心配だ。
とにかく僕の体調不良(熱は無い)くらい添い寝しておけば治るし、グロブリン治療してる娘には多分影響はないだろう(✳︎グロブリン治療をすると3ヶ月は免疫力が高まるので)。
ウチに戻るとお義母さんと息子が待っていた。
僕が息子を風呂に入れる際、うっかりお義母さんに自分の体調不良を口にしてしまった。
「え!そんな体調悪いのに病院行く気?!もし風邪で、それが孫娘にうつったらどうするの!」というので病院に確認すると、そりゃ出来れば添い寝は避けた方がよいのでは、と仰る。
お義母さんは、それ見た事か!と僕を叱咤して「軽く考えないで!まだあの子二歳半なのよ!」と涙混じりに怒り心頭といった具合で帰っていった。
妻も、交代するよりこのまま寝てたいと言ってくれたので、
息子を説得して眠る事に。
お義母さんに対して僕も言い分はあるが、確かに軽率だったのは事実なので、また明日謝っておこう。
翌朝、眠りから覚めるとすっかり回復。息子と午前中は公園で自転車に乗り、午後はスイミングスクールへ。どっちも半年前まで行き詰まってたのに、今は他の子と同じかそれ以上に楽しんでる。
そんな息子を子乗せ自転車に載せ病院へ。
感染の恐れがあり子供同士の面会は出来ないので、息子は病室の前まで。
ずっと娘に会いたい遊びたいと言ってた息子は、扉が開くと顔を突っ込んで必死に娘の名前を呼ぶ。
そんな息子の姿に僕はまた目頭を熱くしてしまうのだ。
交代時、妻にお義母さんに怒られちゃった。一応メールしといたよ。というと、
妻は「あはは、気にしなくていいよ、お母さん情緒不安定だから」と笑い飛ばす。
その後お義母さんからもメールが来て「キツく当たってゴメンなさい、孫娘の事を思うと涙が…」と。
なんとなく、胸が熱くなった。
僕の両親も泣きながら電話してきていて、なんだか僕にとって力になった気がした。娘を守る事はこの人達の希望を守る事なのかも知れないと。
娘はどんどん回復し、
その夜は檻付きのベッドで僕を蹴りまくる。さすがに二歳半の足でも監獄デスマッチよろしく逃げ場無く突き刺さるのでまぁ苦しい。
これはたまらんと背中を向けたら肩を掴まれ
「チョット。チョット。」といって僕を仰向けにして腹部にカカト落とししてくるので、
痛いけど可愛いスケバンの攻撃に思わず笑ってしまった。
翌朝、お義母さんの差し入れの「めばえ」の付録を作る。アンパンマンのガチャガチャ。
よく出来た製品だけどペーパークラフトに小一時間。これ、プラモ好きな僕でもこんな感じなのに、きっと工作苦手なママさん達でも子供の為に一生懸命作ってるんだな、と思うだけで、
僕はなんだか切なくなった。
無心に愛する存在を持てるその優しさを、無償の愛と呼んでいいと思った。