川崎病その8
「お父さん、じゃあいつから保育園行かせますか?」と主治医の先生。退院後初の診察での事だ。
じゃあ来週から行かせます、と返すと、
「しかしあのお兄ちゃん(長男)は素晴らしいですね、シッカリしてる。お父さん良かったですね、楽しみですね。まぁ…妹は自由奔放な子ですがね笑」と子供らの感想を言われ、親によってはどう思うか分からないけど、僕は親近感がわくというか、信頼感が増したし、単純に嬉しかった。
川崎病は発症し冠動脈に後遺症が無くてもその後1ヵ月(3ヵ月、6ヵ月)、1年、5年後を目安に診察を受ける事を勧められる。どちらにせよ完治という診断は無い。
それでも病院を出ればなんとなく気持ちが晴れる。とりあえず後遺症がない娘はきっと「まだマシ」なのだ。それで普通に生活出来るワケで、無宗教な僕でも神に感謝したくなる。急速に冬へ切り変わろうとする空は寒々しい青天で、日差しだけがやけに神々しく見えた。
昨夜、妻と「なんだかまだ入院が続いてる気がする、宿泊の用意しなきゃって笑」なんて話をしていた。僕も仕事帰り、まだそんな気分になる。
でも玄関を開けると、子供達が玄関まで出迎えてくれたかと思ったら、すぐリビングへ走り出し遊びに夢中。
戻ってきた平穏に、病気への恐怖はマヒし、忘れていくと思う。
でも、
多くの感謝は忘れない。
お義母さんや僕の両親、職場、ご近所の友人。
気にしてくれた人、優しい声をくれた人達。
そしてこの二週間を、
共に乗り越えた妻と息子。
僕らの世界は突然その平穏を何の理由もなく失い理不尽に不幸を背負う事がある。今後も、もっと大きな不幸が待っているかも知れない。
でも、だからこそ、
平穏な日々は尊く、誰かの優しさは暖かくて、僕は家族を愛おしいと思える。
全てをかけて守りたいと思えるのだと痛感した。