初めてのオツカイ。
御近所のママが小2の息子さんのお遣いトレーニングでスーパーへ行かせるのでモッサンのお子さんもご一緒にどうですか?と。
妻が快諾、僕は少し不安だけれど、
まぁ小2のお兄ちゃんと手を繋いでなら大丈夫かなと。
しばらくして小2のお兄ちゃんが迎えに来てくれたので、皆で見送る。
「行ってきまーす!」と手を繋いで歩く二人はなんだか可愛いけれど、父、
早々、尾行開始。
よしよし、信号は守ってるな…と物陰から見守る僕の背後から「モッサーン、話は聞いたで〜笑」と、クリエイターを生業とする御近所さんが自転車で登場。あ、じゃあ、様子見で二人に声掛けてあげて下さい、きっと安心すると思いますよ〜と。
ニヤニヤしながら彼が子供らに話し掛けてくれて、安心したのも束の間、
幹線道路を横断中、信号が点滅。分離帯で止まるかと思ったら、二人は顔を見合わせたと思うと全力ダッシュ!
おいーーっ!
そして僕だけ信号で取り残されつつも、
どうにかスーパーで追いつく。
二人の課題は「指定されたオヤツを買う」。オモチャ付きのお菓子を買う小遣いは待たされてないし、今日はダメだと言っていたのに、
案の定、二人でスーパーヒーローシリーズの棚に突撃笑。
笑いを堪えながら影から様子見してると、「たこ焼きスナックあった!」と目標の品を発見。
すぐレジへ向かうかと思ったら、それからの二人のウィンドウショッピングが長い、長いわ笑。
盗撮しつつ状況をライン版に投稿。いつ不審者と判断されてもおかしくないな…と思ってると、二人はレジへ。
大人の中に並ぶ二人の背中は、目を凝らさないと見失いそうで、
頼りなくて切なくて、レジでまごつく彼らに思わず僕は飛び出しそうで、
側から見たら不審者度120%だと思う。
お兄ちゃんの手引きで無事レジを終えた息子、店を出る前のガチャガチャゾーンで足止め。二人してあーでもないこーでもない、とやっていると、見知らぬ30代くらいの女性が「どしたん?お金落とした?」と話し掛けてくれた模様で、よく見りゃアイツら、ガチャガチャしたさで小銭落ちてるのを探してた模様。
さすがに恥ずかしかったのか、大丈夫でーす、と返し、なんだか仲よさそうに女性と別れ、
その後、遊びながらもずっと手を離す事なく、二人は帰宅。
僕は、
お兄ちゃんの顔を見るなり、おう、スゲーな、ありがとうな、よく面倒見ながら行ってくれたね、と彼を褒め、
そして我が子も褒め称えた。
信号点滅で走った事が気になっていたけれど、あれは多分僕のマネだ。
「いいかい?大人は良くても君達はやっちゃダメだよ?」
って言葉が何の信用性も信憑性も持たないのは当たり前で、相手が子供でも「は?」以外の感想を持たないのは当然というワケだ。
日頃の自分を恥じながら、
それでもきっと彼らは「自由」のなんたるかを知ったのだと思う。
自由には責任がつきまとう。
それは二人が繋いで離さなかった、その手その物だ。
それでもその中で、
二人だけで動く、不安、高揚、解放感。
きっと、彼らは楽しかったと思う。
無事帰ってきた二人、僕は信号の事は勿論、付いて行った事も言わなかった。
危険に対する指導はまた後日やれば良い。それよりも、
彼らが生きる事の価値に、喜びに、
こんなに沢山、思うよりも沢山、側に転がってる事に気づいてくれたらと思う。それはね、
何も持たずに生きてきた父さんを、
それでも前に、前に進ませてきた力なんだよ。
どうか、当たり前の幸福が当たり前に彼らに与えられますように。
いつか、箸を握るのもやっとの短い指を絡めあい不安と戦って、
そこに見つけた世界が広く輝いていた事が、彼らの背中を後押ししますようにと、
願わずにいられなかった。